免疫細胞療法とは

第4のがん治療法と呼ばれる免疫細胞療法

免疫細胞療法は、がんの標準治療である外科手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤)に代わる治療法として発展し、第4のがん治療と呼ばれ注目を集めています。その免疫細胞療法の概要や、メリットをご紹介します。

免疫細胞療法とは

人間は、毎日8,000億個の細胞が入れ替わっていると言います。実は、そのうち5,000個程度は、がんの原因である異常細胞として発生しています。健康な状態であれば、免疫システムが異常細胞を感知して排除するため、通常であれば病気になることはありません。しかし、免疫力が低下するとがんの増殖を抑えられず、発症や進行の原因となってしまうのです。

第4のがん治療として免疫細胞療法が注目される理由は、自分の免疫細胞を培養して増強する点にあります。従来のがんの標準治療が副作用による肉体的苦痛を伴うのに対し、免疫療法は身体の内側に影響を及ぼすことから、まったく違ったメリットがあるのです。

免疫細胞療法の種類

1980年代、アメリカ国立がん研究所(NCI)の研究グループが、LAK療法を開発。この研究自体は副作用が強いことから成果を上げられませんでしたが、いくつかの治療法が誕生しました。現在、免疫細胞療法はいくつかの種類が登場しています。

樹状細胞ワクチン療法

樹状細胞ワクチン療法は、樹状細胞の働きを強化する治療法です。この免疫細胞は、Tリンパ球に対してがん細胞を攻撃するように指示するため、がんに集中攻撃ができます。

NK細胞療法

NK細胞療法は、異常細胞全般に攻撃の指示を出すNK細胞を強化する治療法です。隠れているがん細胞であっても攻撃できるうえ、抗体医薬と併用することで効率的に攻撃できます。

CTL療法

患者様が持つがん細胞をTリンパ球に覚えさせ、がんのみを攻撃するように指示する治療法です。胸水や腹水のようにがん細胞が入手しやすい時にできます。

ガンマ・デルタT細胞療法

Tリンパ球のうち、γδT細胞を活性化・増殖させ、免疫力を高める治療法です。なお、ソレドロン酸を用いた治療の場合は、特に治療効果が期待できます。

アルファ・ベータT細胞療法

Tリンパ球を活性化・増殖させる治療法です。特に、異常細胞全般に攻撃するαβT細胞を増殖させますが、免疫系の回復やがんの再発予防に効果を発揮すると言います。

免疫細胞BAK療法

血液からリンパ球を分離した後、特殊な培養方法によりNK細胞、γδT細胞を中心としたCD56陽性細胞をメインに増殖・活性化させます。さらに、CD56陽性細胞以外のキラーT細胞、ヘルパーT細胞も増殖・活性化させ、約100億個の免疫細胞を体内に戻す治療法です。体内に戻ったCD56陽性細胞を中心とする免疫細胞は、がん細胞を包囲し、様々な方向から攻撃します。

向いている人と受けられない人

ほぼすべてのがんに適応する免疫細胞療法は、病気のステージや発症している部位を問いません。免疫力自体を高めるため、外科的手術を行った後の再発・転移の予防や、体力的に抗がん剤の副作用に耐えられない高齢者などが向いていると考えられます。

ただし、免疫細胞療法はすべての方が受けられるものではありません。HIV抗体が陽性であったり臓器や骨髄移植を受けていたりすると、治療できない場合があります。また、白血病や悪性リンパ腫を治療する場合は、自己リンパ球を利用した免疫細胞療法は適用できないこともあります。

大きな副作用の報告はない

免疫細胞療法のメリットは、副作用のリスクが極めて低いことです。必要な免疫細胞は患者様さん本人の血液から採取し、増殖と活性化を目的に薬剤で刺激を与えます。その後、薬剤を除去した上で、点滴液に混ぜて細胞を体内に戻します。免疫細胞の再投与によりは微熱や軽度なアレルギー反応以外、目立った副作用は報告されていません。

なお、日本免疫学会のガイドラインでは、免疫細胞療法を実施する場合はHIVやB型肝炎、その他感染症等の血液検査を行うように定めています。微生物や壊死細胞の混入比率を検査した上で免疫細胞を培養している限り、重篤な副作用が引き起こされる可能性は低いと言えます。

衰えた免疫システムを活性化

人間には、白血球を中心に構成された免疫システムが備わっています。細菌やウィルスや花粉の他、がんのもとである異常細胞も排除します。健康な細胞と異常細胞では、細胞膜のたんぱく質の構成が異なるため、免疫システムは異常細胞を認識して攻撃します。つまり、免疫力の高い健康な状態であればがん細胞は増殖しません。

しかし、加齢やストレスなどが原因で、免疫システムは衰えてしまうことがあります。異常細胞の増殖を防ぎ切れなくなった結果、がんを発症してしまうのです。
免疫細胞を培養し、増殖活性化させて体内に戻す免疫療法。人間が本来持っている免疫力を増強することでがんの増殖を抑えるため、様々なケースに対応できます。

他の治療法との併用による相乗効果

免疫細胞療法は、他の治療法と組み合わせることで相乗効果が期待できます。免疫細胞療法は、ある程度の即効性を期待できる放射線療法と化学療法に対して、その副作用である免疫抑制を補い、縮小したがんに相互作用による効果を発揮するためと考えられます。
たとえば、化学療法の一種である抗体医薬は、がん細胞の目印に結合することで、増殖を抑制する薬です。この薬が目印に結合することで、免疫細胞ががん細胞を認識しやすくなるため、相乗効果が期待されます。
ただし、放射線療法と化学療法は、基本的には正常細胞も傷害するため、主治医と相談しながら併用のタイミングを決めましょう。

免疫細胞療法は、副作用が少なく、再発予防や他の治療法との相乗効果が期待される治療法です。第4のがん治療として視野に入れると良いでしょう。