当院の治療方針について

免疫細胞療法をわかりやすく説明すると「自分の身体の組織」と侵入してきた異物を区別して異物を細胞レベルで排除する働きのことです。排除は、主として白血球が行います。それには異物を食べる、武器を使って攻撃する、他の白血球に攻撃の指令を出すなどあります。
 
異物には、外から入ってくる異物自体と異物に侵された細胞があります。がん細胞は内なる異物と考えられますが、これを免疫系が排除できるかはずっと議論されてきました。
 
 
2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶先生などによる 免疫抑制分子(PD-1とCTLA)の発見とそのモノクローナル抗体によるがん治療の有効性が確認され、免疫増強によりがんが治癒する可能性が確認されました。

がん治療での問題点は、がん幹細胞の存在です。幹細胞は、通常は活動せず細胞分裂も行いませんが、必要な時に分裂を開始し、いろいろな種類の細胞に分化できる万能細胞ともいえるものです。抗がん剤や放射線(X線、γ線)は、細胞分裂を行っている細胞に作用して細胞死に至らせますが、休止状態にある幹細胞を殺すことは、ほとんど不可能です。見かけ上がんを小さくできますが、がん幹細胞が残るため多くの場合再発してきます。

幹細胞を除去する唯一の手段は手術により切除すること、または重粒子放射線治療です。しかしこれらは、局所療法ですので、局所を越えたがんの進展に対応できません。

温熱療法は幹細胞を殺す可能性がありますが、体深部局所の温度の測定が困難なこと、また、患部の加熱が不均等で血管の周囲などに温度の低い部分ができ、再発につながる欠点があります。したがって、がんがある程度拡がってしまった場合は、化学療法で対処することになります。

化学療法では、がん細胞の代謝やDNA合成を止める薬がほとんどで、正常細胞も同じ程度に障害されることから、苦しく甚大な副作用を伴う治療法です。近年は分子標的薬が開発され、がん細胞特有の代謝を標的とした薬が開発されつつありますが、問題はそのような標的がすべてのがん細胞に存在するのでなく、標的が存在しない細胞群が混在するため、それらを叩くため通常の抗がん剤の併用が必要となることです。

免疫療法は多少の一過性発熱やだるさ程度の副反応を伴うものの身体にやさしい治療で、白血病や悪性リンパ腫などの血液、リンパ系疾患を除けば誰でも受けることが可能です。また、重要な点はがん幹細胞を攻撃できる可能性があることです。

免疫療法では、がん細胞と免疫細胞の一対一の決闘のような戦いが行われます。免疫細胞は、血液に乗って身体中どこまでも到達でき(脳を除く)、戦うことが可能です。ただし、がん細胞を内なる敵として免疫細胞が認識すること、また、がん細胞に対して十分な免疫細胞数があることが必要です。

当院では、故海老名卓三郎医学博士が確立した免疫細胞BAK療法を主体として治療を行っています。

この治療は、自然免疫と獲得免疫の主役となる免疫細胞を天文学的数字まで増殖させ(通常、50-100億個)、身体に戻す治療です。NK細胞やγδT細胞の増殖が期待され、これらは自然免疫の主役ですので、樹状細胞による抗原提示を要さず、がん細胞を攻撃します。また、細胞障害性T細胞も増幅され、自然免疫と獲得免疫を併せての包括的がん免疫療法となります。

再生医療等に関する法律について

平成26年11月25日、再生医療等の安全性の確保等を図るため、再生医療等の提供機関及び細胞培養加工施設についての基準を新たに設ける、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)が施工されました。

再生医療のリスクに応じた分類を行い、その分類ごとで提供基準や計画の届出等の手続き、細胞培養加工施設の基準と許可等の手続きを定める事で、迅速かつ安全な再生医療を提供する事としました。

当院では東北厚生局へ細胞培養加工施設の届出および再生医療等提供計画の届出を行い、厚生労働省に受理されています。 

細胞培養加工施設の届出

きぼうの杜クリニック (施設番号:FC2140001)

再生医療等提供計画の届出

〇悪性腫瘍に対する免疫細胞(NK細胞、γδT細胞、CD8陽性細胞、CD4陽性細胞を含む)治療(生物応答修飾剤活性化細胞障害性リンパ球療法:BAK療法)  (計画番号:PC2150011)

〇悪性腫瘍に対するNK細胞療法 (計画番号:PC2170002)

〇悪性腫瘍に対する自家樹状細胞ワクチン療法 (計画番号:PC2210004)