ご挨拶院長 伊藤 正敏
日本人の平均寿命は、2019年集計で男性81歳、女性87歳となりました。
これは平均値ですので、この年齢まで達することができない方が数多くいらっしゃることも事実です。
この原因として、誰しも気になるのは悪性腫瘍ではないでしょうか?
生涯における悪性腫瘍罹患率は、 男で66%、女性で50%(国立がん研究センター、https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html) と報告されています。
つまり、半分以上の方がいつかは悪性腫瘍に罹患する時代となりました。
がんになるのも天命かも知れませんが、 普通の方は何らかの対策をしなければと思っていられると思います。
がんは、遺伝子の部分的な異常により発症すると考えられています。
遺伝子の問題であるならば、ひとつのがんを克服したとしても同じようながんが近傍に発生したり、違う臓器に異なるがんが発生する同所性/異所性発がんの問題もあります。
「がんで死なないためにはどうしたらよいか?」は重要な問題ですが、一般的には、がんを含めた重大疾患による人生の終わりを、できるだけ遠くするにはどうしたらよいかではないでしょうか?
私は、それを免疫力を高めることと考えています。
私たちの身体の中で細胞レベルの発がんは、必ずしも珍しくないといわれています。
悪性度が低く増殖力も弱い場合、がん細胞はそのまま寿命を終えることもあります。
また、明瞭ながん抗原を発現している場合は、免疫監視系で検出され処理されると考えられます。
これらは未病のうちにがんが治癒したことになりますが、この現象を臨床の場で証明することは著しく困難です。
時に、がんの自然退縮として報告されることがあり、がんの未病治癒が顕在化した現象と思われます。
当院では、血液中の悪性細胞検出(Circulating tumor cells,CTC)検査を開始しました。
血液中に腫瘍細胞が出て全身を回っている。
血行性転移というのはこのようにして始まるわけですが、これを採血により早期に診断する方法が確立されつつあるのです。
これはliquied biopsy (液性生検)とも称され、将来的には悪性細胞のDNA解析に進むようです。
そのため、がんの超早期発見やがん治療薬の選択に利用される手法として注目されています。
外国ではすでに多くの報告があり、がん患者の10-50%で陽性になるとのことです。
がんに対する免疫が成立するかは長く議論されてきましたが、がん免疫抑制分子(PD-1とCTLA)の発見とそのモノクローナル抗体による がん治療の有効性が確認され、免疫療法が手術、放射線、化学療法と並ぶ第4のがん治療法として確立されました。
がんの免疫応答には、 自然免疫と獲得免疫があります。
前者には、NK細胞やγδT細胞が主役となり樹状細胞による抗原提示を必要としない利点がありますが、 当該細胞数が限られている欠点があります。
獲得免疫では十分なTリンパ球を確保できますが、抗原提示とT細胞によるその受容が必要なことと、自己免疫寛容の問題があります。
当院では、BAK療法を中心に免疫治療を行っています。
BAKとは、Biological response modifier Activated Killerから命名した生物製剤で、公益財団法人仙台微生物研究所の故海老名卓三郎博士が開発された方法に準拠しています。
特にCD56+細胞(NK細胞やγδT細胞)を増幅しての自然免疫賦活に加えて、細胞障害性キラー(CD8+)細胞も増幅し、包括的な免疫賦活療法を特色とします。
化学療法に比較して重篤な副作用等は、ほとんどありません。BAK療法は、採血した約20ml内のリンパ球を、35-100億個程度にまで増殖させて点滴にて体内に戻します。
本治療により免疫力の賦活が期待されますので、がんとその治療による苦しみを体験することなく、がんと共生し、できるだけ長く家族や 友人達と過ごすことができることを第1の目標としています。