(第10回 院長通信)今後の展開2
VASH2のがんにおける機能は下記のように多彩ですが、
(1)がん細胞自身に作用して浸潤・転移を促進する
(2)がん組織周囲の血管に作用して血管新生を促進する
(3)がん随伴線維芽細胞を活性化する
(4)がん細胞の遺伝子発現変化を介して骨髄由来免疫抑制細胞やM2-マクロファージをがん組織内に集積させ、Tリンパ球を排除してがん免疫を抑制する
VASH2ペプチドワクチンは、これらのうち特にがん細胞の浸潤・転移を抑制します。これはワクチンに利用したペプチド部分が上皮間葉転換に関わるVASH2の機能性ドメインであることを示唆しています。

VASH2ペプチドワクチンはペプチド部分に対する抗体産生を誘導して治療効果を発揮するものであり、その効果は抗体価の上昇に比例して増強します。さらに、ワクチンの特徴として抗体価が下がった場合にはブースターショットを追加して抗体価を再上昇させることで治療効果を長期間にわたって維持することが可能となります。
VASH2ペプチドワクチンによる治療の適応範囲は、VASH2の発現が上昇している全てのがんに及び、最も悪性で難治性の膵がんに対しても治療効果を発揮することが可能です。
使用方法としては、下記のケースが想定されます。
(1)手術前に用いて術中のがん細胞の播種を阻止する
(2)手術後にも引き続いて用いて術後の再発を予防する
(3)進行がんで手術ができない場合でも抗がん剤や他の治療と併用し、がん転移を阻止することで生存期間を延長する
さらに、ワクチンとしての性質からがんのハイリスク群に用いて、例えがんを発症したとしても転移を阻止して治療を容易にすることも考えられるでしょう。
今後の展開ですが、ヒトに使用可能なGMP (Good Manufacturing Practice) に準拠したワクチン製剤を製造し、毒性・安全性試験をクリアーし、そして臨床治験に進むことを目指しています。


