樹状細胞とは

名前のとおり、細胞の周囲に突起を伸ばしている様子が、樹木の枝が伸びている状態のような見た目をしている細胞です。

この樹状細胞は、がん細胞を直接攻撃するのではなく、がん細胞の情報となる「目印(抗原)」を取り込み、細胞内で分解しT細胞にその特徴を伝えやすい状態にします。この異物の特徴を伝える能力を「抗原提示」といって、T細胞に攻撃を指示する他、これまで異物(抗原)に接したことのないナイーブT細胞を活性化するという「司令塔」としての役割を担っています。

がん抗原(がん目印)とは

がん細胞の目印となる「特有のたんぱく質」です。

正常な細胞の表面にはありませんが、細胞ががん化すると表面に現れます。人間の体内にある免疫細胞は、このがん抗原を覚えることにより、異物(がん細胞)を見つけ出して攻撃しています。

樹状細胞ワクチン療法とは

樹状細胞がもつ特徴的な「司令塔の役割」を最大限に活かすことを目的とします。自己の樹状細胞にがん抗原(ペプチド)を覚えさせ、がん細胞に特異的な攻撃システムを構築する「樹状細胞ワクチン」を培養して作製します。

がんの目印と結合させた樹状細胞を皮下(または皮内)注射することにより、体内の攻撃隊であるナイーブT細胞へ攻撃の目標を指示し、がん細胞に対し特異的細胞傷害性T細胞を誘導します。

当院では樹状細胞と結合させる「がんの目印」として、人工的に作製した「WT1がん抗原」を用います。

「WT1がん抗原」は、ウイルムス腫瘍遺伝子のことで、ほとんどの固形がんに高発現するがん抗原であると報告されています。下図で示されているように、「WT1」は、75種類のがん抗原において、9項目の有用性について評価され、米国の権威ある学会誌「Clinical Cancer Research」で、最も優れていると評価されたがん抗原です。

                 学会誌「Clinical Cancer Research」2009

当院の樹状細胞ワクチン療法は、治療前のHLA検査の必要がありません。

従来の「WT1ペプチド」では事前に、白血球の型(HLA型)を調べる必要がありましたが、当院で使用する人工抗原「MACS® PepTivator®」は、11アミノ酸ずつオーバーラップするペプチドからなり、タンパク質の全配列をカバーしています。これによって、すべてのHLA型の患者さんに適用可能となりました。

当院の樹状細胞ワクチン療法は、より高い治療効果を期待するため、任意のオプションで人工抗原を加えるのではなく、最初から複数の人工抗原を使用します。WT1の他にも、がん細胞に特徴的に高発現している人工抗原を複数用いているので、様々ながん種に対して適応が可能です。

当院の樹状細胞ワクチン療法の特徴

  • 特異的なT細胞を誘導し、がん細胞に狙いを定めて集中的に攻撃します。
  • T細胞以外の免疫細胞も活性化され体内で持続化するため、長期的な免疫力効果が維持されます。
  • がん治療(三大標準治療、他の免疫細胞療法)との併用も可能で、高い治療効果が期待されます。
  • 入院の必要がなく、通院による採血と点滴により治療が可能です。
  • 事前のHLA検査の必要ありません。すべてのHLA型の患者さんに投与可能です。

基本的な治療の流れ

  1. 患者さんから約50ml ~100ml 採血します。血液から樹状細胞のもととなる単球細胞を取り出し、樹状細胞へと誘導させます。
  2. 誘導した樹状細胞に、がんの目印となる複数の人工抗原を結合させて 「樹状細胞ワクチン」を作製します。
  3. 約2週間の培養期間を経て作製した樹状細胞ワクチンを、皮下(または皮内)注射で患者さんの体内に戻します。
  4. がんの目印となる人工抗原と結合した樹状細胞が司令塔となり、攻撃隊であるT細胞にがんの目印を提示することにより、がん目印と結合したリンパ球が特異的にがん細胞を攻撃します。
  5. 樹状細胞ワクチンを2週間に1回のペースで注射します。合計6回の注射を1クールとして、1クールの治療期間は約3ヵ月です。
  6. 1クールの終了後に、治療効果の評価をします。その結果をもとに、今後の治療方針を患者さんやご家族と医師で相談して治療を進めていきます。